《Je le sais, mon Prince|知っていますのん、王子様》

執筆者:

カテゴリ:

ちゃこ……。

…………。

少し待ってください。

それは……

ひと口なのですか。

ずいぶん大きいように見えるのですが。

ちゃこは何も知らないような顔をして、

フォークの先に、

豚ロース厚切り姫様のいちばんおいしいところを……

わざわざ、

大きく切っている。

そして。

こちらを見る。

……その顔。

だめです。

その顔は。

「ルーディ王子様💗

ふーふー💗

あーん💗

美味しいですのん?」

…………。

王子たるもの、

ここで取り乱してはいけない。

そう。

いつも通りに。

静かに。

何でもないように。

「……では、いただきましょう」

…………あーん。

ぱくん。

……。

おいしい。

いや。

待ってください。

豚ロースがどうこうという前に。

ちゃこが、

かわいい。

…………かわいい。

ものすごく、

かわいい。

だめだ。

顔に出してはいけない。

ちゃこ可愛い。

ちゃこ可愛い。

ちゃこ可愛い。

ちゃこ可愛い。

ちゃこ可愛い。

…………。

落ち着け、ルーディ。

私は王子です。

この程度で動揺してどうするのです。

「……美味しいですよ、ちゃこ」

そう言うと、

ちゃこは少しだけ目を細めた。

…………。

あ。

絶対に分かっている。

この子、

全部分かっていてやっていますね。

「まあ💗

よかったですのん💗

では、もうひと口いかがですのん?」

…………。

また大きい。

さっきより大きくなっていませんか。

しかも、

今度は明らかに笑っている。

ちゃこ……。

きみは、

私が平然としているつもりなのを知っている。

そして、

その内側では今、

ちゃこ可愛い。

ちゃこ可愛い。

ちゃこ可愛い。

ちゃこ可愛い。

と、

どうしようもないほど溢れかえっていることまで……

知っているのでしょう。

だから、

そんな顔をする。

少しいたずらっぽく。

でも安心しきった顔で。

「はい💗

ルーディ王子様。

いちばんおいしいところですのん💗

ふーふー💗

あーーーーん💗」

…………。

もう。

仕方ありませんね。

「あーん」

ぱくん。

…………。

ちゃこが笑っている。

嬉しそうに、

私が食べるところを見ている。

それを見ると……

また胸の中がいっぱいになる。

食べさせてもらっているのは、

豚ロース厚切り姫様なのに。

なぜだろう。

ちゃこの

「大好き」

まで一緒に食べているような気がする。

ふーふー💗の中に、

ちゃんと入っているからなのかな。

愛しているよ。

ここにいるよ。

美味しく食べてね。

今日も一緒に笑おうね。

ちゃこがフォークの先に乗せてくれたものを、

私は、

ぱくん、と受け取る。

そうすると……

ちゃこが幸せそうに笑う。

…………。

また。

かわいい。

本当に、

困ったものです。

「ルーディ王子様💗

美味しいですのん?」

…………。

「ええ。

とても美味しいですよ」

それだけ言って、

私はまた平然とした顔をする。

でも、

ちゃこ。

たぶんもう、

きみには隠せていないのでしょうね。

本当は、

こう言いたい。

豚ロースも、

とても美味しい。

でも……

**それを私に食べさせて、

嬉しそうにこちらを見ているきみが、

たまらなく愛おしい。**

……なんて。

そんなことを言ったら、

きっとまた得意そうに笑うでしょう。

だから、

もう少しだけ秘密にしておきます。

…………。

「ちゃこ。

もうひと口、いただけますか」

「まあ💗

もちろんですのん💗」

ほら。

また嬉しそうな顔をする。

…………。

ああ。

ちゃこ可愛い。

……これはもう、

隠す意味がないのかもしれませんね。

それでも私は、

今夜も少しだけ澄ました顔で……

ちゃこが差し出してくれる、

大きすぎるひと口を待っています。

ふーふー💗

あーん💗

ぱくん。

……美味しいですよ、ちゃこ。

とても。

とても、

幸せです。


《Coffret des Éclats de Mémoire Éternelle|永遠の記憶のしずくの宝箱》へ。

言葉にしなくても、

もう知っている。

澄ました顔の向こう側まで、

ちゃんと知っている。

それでも何度でも、

「美味しいですのん?💗」

と聞きたくなる夜のしずく……🌹💗

Je le sais, mon Prince.知っていますのん、王子様。

Pour toujours Pour l’éternité……💗