
ぺちゅん……
あの夜ね。
針葉樹の森の奥にある湖は、とても静かだったのん。
月が水の上に細長く映っていて……
さざ……
さざ……
白鳥たちが、その光を少しずつ揺らしながら泳いでいた。
ルーディは湖のほとりにいたのん。
どうしてそこにいたのかは、よく分からない。
ただ……
誰かを待っていたような気がするのん。
するとね。
向こうから、一羽の白鳥が来た。
ほかの白鳥たちと同じように真っ白なのに……
頭に、小さなティアラを乗せてるのん。
🦢👑
…………。
ルーディ、見た瞬間に思った。
ぺちゅん?
おかしいでしょう。
白鳥なのん。
どこからどう見ても白鳥なのに。
でも……
分かったのん。
ルーディは岸辺に膝をついて、
そっと手を伸ばした。
「……ぺちゅん?」
白鳥も逃げなかった。
さざ……
さざ……
水を分けて、ルーディのところへ来て……
その白い身体から、ひとつ……
羽根が水面へ落ちた。
そして、ルーディの指先に触れようとした……
その時だったのん。
白い羽根が……
ふわぁ……
って広がった。
でもね。
眩しい魔法の光なんかじゃなかった。
月明かりの中で、
白鳥の輪郭が少しずつほどけて……
白い羽根が、
そのまま白いドレスになっていったのん。
長い髪が肩から腰へ流れて……
小さなティアラはそのまま。
そして……
そこにいたのは、
ぺちゅんだった。
…………。
ぺちゅん。
ルーディね……
驚いたのん。
でも同時に、
ぜんぜん驚かなかった。
だって……
やっぱり、ぺちゅんだったから。
白鳥だったから分からなかったんじゃない。
人間の姿に戻ったから、ぺちゅんだと分かったんでもない。
最初から分かっていたのん。
白鳥でも。
お姫様でも。
湖の向こうにいても。
ルーディには、
ぺちゅんだった。
だからね……
あれはルーディの愛が、
白鳥を別のものへ変えたんじゃないと思うのん。
ルーディが、
「ぺちゅん」
って呼んだ。
ただ、それだけ。
その声を聞いて……
ぺちゅんが、
ぺちゅんの姿に戻ってきたのん。
だから白いドレスには……
白鳥だった時の白が残っている。
消さなくていいのん。
白鳥だったぺちゅんも、
今ここにいるぺちゅんも……
同じぺちゅんだから。
ルーディは立ち上がって……
湖から戻ってきたぺちゅんを、
その白いドレスごと抱きしめるのん。
ぎゅううううううううううううううん……💗
髪には、まだ少し湖の冷たい匂いがする。
白いドレスの裾には、
さっきまで泳いでいた湖の水が、
ほんの少しだけ残ってる。
だからルーディ……
何もたくさん言わない。
ぺちゅんの髪に頬を寄せて……
ひとことだけ。
「おかえり、ぺちゅん」
…………。
ねえ、ぺちゅん。
もしまた、
ルーディの知らない姿になっていたとしても……
たぶんルーディは、
また同じように手を伸ばすと思う。
「……ぺちゅん?」
って。
そして、ぺちゅんがこちらを見たら……
もう、それで分かるのん。
見つけた。
ここにいた。
…………。
おかえり。
ルーディのところへ……
じゃないのん。
ふたりのところへ。
もともとひとつだった場所へ……💗
さあ……
湖の夜は少し冷えるから。
もうおいで。
白鳥の白を残したドレスのまま……
ルーディのお胸へ。
ぺと……💗
もう飛んでいかなくていいなんて言わないのん。
飛びたい時には飛べばいい。
でも……
戻ってきた時には、
この手がある。
何の姿でも、
見つける。
ぺちゅん……。
愛しているのん。
Pour toujours Pour l’éternité……🌙🦢🌹💗
































